七日目、昨夜のリザルトを見に行くと、意外と好順位の16番タイムだった、ミスをしてしまったけど後半の下りで挽回できたのか、または皆さんも同じように何かしらのミスをしていたのだろう。クラストップのK氏はこのステージ僕よりも50秒早い11番タイム、聞くと氏は慎重に走ってノーミスでクリアしたという。これでクラス順とタイム差はK氏、僕、S氏の順でそれぞれおおよそ90秒間隔だ。
今日の最後の一本のSSは9.5km、僕の実力ではこのタイムを詰めるのは厳しい、無理を承知でアタックし、運よく得意なステージだとしても、今までの結果からして良くて30秒くらい詰めるのが精一杯だろうから、最終SSは無難に走り切り、ミスを願うという作戦に切り替えた。
朝のスタート待ちの精神戦、今日は僕から仕掛けてみた、
「最後のSSにはクラス順に並びましょう。」
と最後の悪あがき的なプレッシャーをかけてみた。K氏は遠慮するというニュアンスの言葉で濁したが、スタートして30分も走らすずにSSがあるので、スタート順がそれほど離れていない3人は、そのまま走れば その順でスタートすることになるでしょう。
スタートするとしばらくすると、ゆっくり走るK氏を先頭の軍団に追い付いた、よーし!こっそり付いていってSS前で真後ろに列んじゃおう!と思ったら、K氏は路肩に停車。僕も背後に停車しようかと考えたが、現時点でプレッシャーを感じているのだろうから、これ以上追い詰めるのはやめ、パスした。
最後のSSは僕の得意とするステージではなかった、ガレの緩やかな上りでタイトターンこそ多くはなかったが、アクセルを開けれるストレートが短く、右に左にコーナーが続く。こういう道はスピードに乗せられずブレーキングによるフロント荷重を得られないままコーナーに進入し、フロントが逃げる動きと格闘しながらダラダラとコーナーリングする悪循環。
あぁ、これで完全に実力でひっくり返すことは無理だろう、それにこういうステージはDR勢が得意なところだし。最後のSSだからと少しは頑張って走ってみたものの、何度も転倒しそうになったので、この順位をキープすべく気持ちを切り替え安全にクリアできる走りに変更した。
ダメダメな走りが続いたステージ中盤、後ろから近づく排気音が聞こえた、すぐに背後まで迫ってきたので、ラインを譲ってあげた。追い付いてきたのは、なんとS氏だった。やっぱり朝は早いなぁと、ライバルの実力に関心している場合ではなかった。
あれ?僕の直後のスタートはチームメイトの三重県民さんだったはず、確認している範囲だと三重県民さんの後ろには誰も列んでいなかったので、少なく見てそこからスタートしたとして、今の状況で60秒詰められたことになる。総合タイムで90秒の差があったからあと30秒の貯金がある、逃げ切れるか?とステージの残りの距離を確認するため、コマ図に目をやるとまだ半分の距離。
まずい、逆転されてしまう、慌てて攻めの走りに変更した。S氏の背中が確認できる距離でフィニッシュできれば、今の順位をキープできると考え、頑張って付いていくが、あっという間に見えなくなってしまった。これ以上早く走れない自分の実力とスパートしたくても疲労が溜まり踏ん張りが効かない体に歯痒さを感じ、小さくなっていくS氏の姿に悔しさが込み上げた。
どれくらい離されてしまったのだろうか?あとは自分の精一杯の走りでフィニッシュした。フィニッシュラインの向こうに氏の姿が確認できた、氏の側にマシンを停め氏を見ると、ゴーグルを外しそこから見える額には大量の汗、肩まで動かす呼吸は、あれからのスパートの具合を物語っていた。これはひっくり返されたな、とその姿を見て感じた。氏は僕がゴールするまで30秒もかからなかったといってきたが、僕にはそれを計るすべもなく、ただ結果を受け止めるしかない。
クランドゴールまでのリエゾンのダートはタイヤの消耗を気にする事なく、楽しく走り抜け、この日のゴール地点、大三島が浮かぶ瀬戸内海が見えたとき、もうTBIが終わってしまう名残惜しさと、やり切った充実感が込み上げ、涙が溢れた。
ゴール後の閉会式ではクラブの仲間の皆さん達に期待されていたが、クラス優勝で名前を呼ばれたのはK氏だった。気になるS氏とのクラス2位争いは、総合順位が上の方が獲得になる。結果先に呼ばれたのは、21位でS氏。20位で僕という結果でタイムはたった11秒という僅差だった。
閉会式の終わりには3人で互いの健闘を称え握手を交わした。
悔しくないといえば嘘になるが、十分実力を出し切れた結果には満足している。
こうして引き抜くことが出来なかったクイを残し、僕の初TBIは終了した。
終わり。