この秘策は追いつかれないことが絶対条件だ。スタート直後からそれはもうがむしゃらにアクセルを捻った。やる気になればなるほど相手の思う壷なのはわかっちゃいるけど押さえられない気持ちの高ぶりがブレーキングポイントを奥へ奥へと導いてしまう。そうなれば当然オーバースピードでコーナーに突っ込みすぎパニックブレーキ、エンストさせてしまうのは去年から成長のないところ。なので今年は
開けろ!の合言葉に加え
突っ込みすぎるなー!ってのも叫んでいたけど、このSSでは全くダメ。結果エンスト5回に道じゃないところ走ってあわや崖落ち寸前だったりと、タイムを縮めるのには都合の良い好みのステージだったのにミスばかりで相手の思い通りになってしまった。
しかしチェッカーを受けてすぐ後ろを確認したら、
秘策の手順その1、
追いつかれない
成功しているようだ。
ならばと手順その2を遂行
そりゃ急いだよ、なにがって?
相手がゴールする前にバイクから降りているのとヘルメットを脱いでいること。
実はこの秘策は去年自分が意図しないところで生まれたのだ。去年のTBIでもアノヒトに同じことされたんだけど、その時は走りに自信がなかったから、別にSS内で追い抜かれるってことあんまり気にしてなくて、SSをスタートしたら自分の好きなステージ、走りに集中できて気持ちよくゴール!なにげにバイクから下りてヘルメットを脱いでたらその後ゴールしたアノヒトが自分のその状態をみるや、「もうヘルメット脱いでるー!このステージ負けたかも。」なんてプレッシャーをかけたつもりの本人が逆にプレッシャーになってたわけ。実際この時は自分が数秒早かったんだけど、追い上げる人は追いつかない限り前走者とのタイム差が分からないということなのだ。
だからとどめの手順その3、
演技
ホントは肩で息をするくらい体力を消耗してたけど、あたかも大分前にゴールしたよぐらい涼しい顔を装う、丁度良くチームメイトののりおさんがフィニッシュラインの先にマシンを止めてたのでその脇に急いで停車、「何を慌ててるの?」の質問にかくかくしかじか説明して演技に協力してもらった。アフリカ氏のゴール、タイム差は測る余裕はこちらにもないぐらいの差だ。しかし秘策がどれくらいの効果があったのかは相手の表情から見て取れる、SS内でパッシングしたアフリカ氏のチームメイトのさとみっちーさんがゴール後、氏にこう言っている「ごめ~ん、少しブロックしちゃったね~」と。それに答えるアフリカ氏「大丈夫、大したことないよ」と言っている表情には余裕や自信のチラリは見られなかった。
決まったな!
僕は心の中で大きくガッツポーズをしその場を後にした。相手の作戦?通りにタイムを詰める事は出来なかったけどプレッシャーを跳ね返した事によって、失敗を引きずっていた気持ちを一掃し、結果はどうであれ、あとは自分の走りをするだけと、決戦の25kmナイトSSへ向かう気持ちに平静さが甦った。